
日本推理作家協会会員

シファの生みの親、宮山司令の若き日々!
シファの開発担当であるとともに、
かつてファイターパイロットであった宮山司令。
その若き日は、戦闘機「カタナ」のパイロットとしての日々。
そして、その日々は、ロシア中国連合の作り出した
空を覆う巨大空中兵器「ロスノイ」の侵攻に立ち向かう
過酷な戦いの日々だった!
戦いは海峡を越え、日本本土に迫る!
今、宮山司令の受章した防衛功労章の秘密が明らかになる!
核融合エンジンと反重力装置がようやく実現したがまだ広汎に普及するには至っていない世界。
舞台は日本。登場するのは日本を中心に、日本海を囲むロシア・中国・統一半島国家、そしてアメリカ。
微妙なバランスによって保たれていた仮初の「平和」が、新技術の登場によりそのバランスを失い戦争へと突入する。
その戦争の始まりから終わりまでを日本の最新鋭戦闘機「カタナ」パイロットの視点から綴った物語。
ハードSF的にいろいろと科学用語が散りばめられていますが、そういうもんだとわからないまま読み進めても大丈夫な程度に留めてあるので、その辺わからない方でも大丈夫。
開戦前の日常から始まり、想定外の初撃・開戦。準備不足のまま進行せざるを得ない状況の中、戦争が日常になってゆく。
ある種、ハードボイルド的に描写される戦況と、その大嵐に飲まれるしかない主人公の心情が、戦争に於けるザラッとした乾燥感を醸し出している。
今読んで、なかなかに不思議なリアリティが面白い。書かれたのは10余年前なわけだけど、当時よくここまで各国の出方を考察したな、と思う。
時代が追いついた、は陳腐な言い方だけど、パワーバランスや各国の心情、情勢は今読むとしっくりくる。
ある種淡々と進む物語によって、「どこか熱くなれずにいる」主人公の、現実の世界・社会にそして戦争に翻弄されながらも、そこから経験し自覚してゆく様が一番のリアリティ足り得る。
この物語は、氏の構想する世界のメインである「シファ」たちの話へと繋がる前日譚(より前の、というべきか)となっており、これ一つで物語ではあるが、あくまでもプレ物語の、前菜として味わうに程よい長さにまとまってるので、サクッと読めるので、お試し的にもちょうどよいかも。
--Rita Cinquetti (ありがとうございます!)